薬事法におけるガスの取り扱いはどうなっている?

一見すると、薬事法とは無縁のように感じられるガスですが、医療現場などでは日常的に用いられ、取り扱いに慎重さが求められる医薬品として定義されています。

そのため、品質管理や包装表示、製造・販売などの面で厳しい規定が定められているものです。この記事では、薬事法とは何かという定義をはじめ、医薬品としてのガスとの関係について、詳しく解説していきます。

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薬事法とは?

薬事法とは、医薬品や医療機器などの安全性と有効性を確保するために制定された法律です。医薬品は人の健康に直接かかわる重要な製品であり、その品質、安全性、有効性の確保は非常に大切な要素となります。そのため、これらの製品が適切に、開発、製造、販売されるように規制し、消費者を保護するのが薬事法の目的です。

薬事法は、医薬品の承認や登録、製造・販売業者の規制、広告の規制など、様々な規定を含んでいます。

そのため医薬品の開発や製造、販売にかかわる企業は薬事法に基づく厳格な基準と手続きを遵守しなければなりません。さらに広告に関しても厳しい規定を定めています。不適切な情報は甚大な健康被害を招く恐れがあるため、広告には正確かつ客観的な内容が求められます。

そのため、広告できる内容は薬事法の基準に沿って承認された使用範囲や効能・効果に限られています。さらに、この法律は医薬品だけに限らず、医療機器や特定の化粧品などにも適用されます。

これらの規制は、消費者の安全と信頼性を保護し、市場に不適切な製品が流通することを防ぐために重要な役割を果たしているのです。

薬事法に関わるガスとは?

薬事法に関わるガスといえば、医療現場で使用される医療ガスのことをさします。これらのガスは、患者の治療や診断、手術などにおいて重要な役割を果たすもので、高純度で品質と安全性が確保されていなければなりません。

この医療ガスには、日本薬局方に収載されているものと、局方外のものがあります。日本薬局方とは、医療用医薬品の品質基準などを定めた公的な規格であり、一部の医療ガスもその基準に合致しています。日本薬局方に収載されている医療ガスは、一定の品質基準に従って製造され、その品質が保証されています。

しかし、薬事法によって医療ガス全体が医薬品として定義されているわけではありません。一部の医療ガスは、医薬品の定義には当てはまらず、薬事法の規制対象外とされています。これらの医療ガスは、一般に利用される医療用具として扱われるものです。

医療用空気、MRI用の液体ヘリウム、校正ガス、検査・測定用ガスなどがそれにあたります。これらは薬事法ではなく、高圧ガス保安法などといった法的な枠組みに基づいて管理されています。

薬事法で医薬品として定義されている医療ガスの種類とは?

薬事法によって医薬品に定められている医療ガスには、「酸素」「二酸化炭素(炭酸ガス)」「窒素」「亜酸化窒素 (笑気ガス)」「エチレンオキシド (酸化エチレン滅菌ガス)」などがあります。それぞれの特性や用途は次のようなものです。

#酸素

正式名称は「日本薬局方酸素 及び 液体酸素」です。用途としては、呼吸器系疾患に対する吸入や蘇生、人工呼吸器等の吸入療法や高圧酸素療法、合成空気(人工空気)、笑気ガスへの混合、低出生体重児の保育治療などとなります。

液体酸素は、気化して日本薬局方酸素として使用します。#二酸化炭素(炭酸ガス)正式名称は「日本薬局方二酸化炭素」です。用途としては、酸素と混合し呼吸中枢を刺激する呼吸療法に用いるほか、高山病における呼吸困難や、一酸化炭素中毒などによる呼吸中枢の興奮性の低下などに用いられます。

#窒素正式名称は「日本薬局方窒素 及び 液体窒素」です。用途としては、日本薬局方酸素と混合して合成空気として使用します。液体窒素は、気化して日本薬局方窒素として用いますが、液体状態のままで冷凍手術用などに使用されることもあります。

#亜酸化窒素 (笑気ガス)

正式名称は「日本薬局方亜酸化窒素」です。鎮静作用の強さと弱性の麻酔作用に特徴があり、揮発性麻酔薬と併用されたり、歯科治療などの鎮痛として用いられることがあります。#エチレンオキシド (酸化エチレン滅菌ガス)

エチレンオキシドは減菌作用のある混合ガスで、ほぼ全ての微生物を殺し、ウイルスなども不活性化する強い効能を持つので、医療用具などの殺菌・減菌に用いられます。

薬事法におけるガスの包装・表示事項とは?

薬事法に定められた医療ガスは、表示に関する記載事項が義務付けられています。まず、「製造販売者の名前と住所」です。名前に関しては個人名の場合は氏名を、法人名の場合はその名称を記し、住所は総括製造責任を行うものがその業務を行う事務所の住所と定められています。

次に医薬品の「名称」ですが、日本薬局方に収載されているものはその名称で、局方外の物は一般的名称で記載します。さらに、「製造番号と製造記号」「重量、容量又は個数等の内容量」は必ず表示します。これは日本薬局方も局方外も同様です。

日本薬局方医薬品については、「 日本薬局方」の文字及び日本薬局方で記載するように定められた事項を記載します。医薬品が「要指導医薬品」である場合はその記載を行い、「有効成分の分量」も表示するようにします。

薬事法におけるガスの製造・販売の責任者資格は?

薬事法に定められた医療ガスを製造・販売しようとすれば、有資格者を置く必要があります。資格者の条件には3つのパターンがあり、1つは「旧制中学若しくは高校又はこれと同等以上の学校で、薬学又は化学に関する専門の課程を修了した者」となります。

さらに「旧制中学もしくは高校又はこれと同等以上の学校で、薬学又は化学に関する科目を修得した後、医療用ガス類の品質管理又は製造販売後安全管理に関する業務に3年以上従事した者」にも資格が与えられます。3つ目のパターンは、1つ目と2つ目で定義された資格条件と、同等以上の知識経験があることを厚生労働大臣が認めた場合です。

たとえば「高圧ガス第一種販売主任者免状所持者」などがそれにあたります。

ガスには医薬品としての用途もあり、その場合は薬事法の規定を受ける

薬事法とは、医薬品や医療機器の製造・販売などを規制する法律です。医療ガスは薬事法の範囲に含まれ、安全性と品質の確保が求められます。ガスのうち、医薬品として定義されているのは、「酸素」「二酸化炭素(炭酸ガス)」「窒素」「亜酸化窒素 (笑気ガス)」「エチレンオキシド (酸化エチレン滅菌ガス)」などです。

医療ガスの包装や表示には、特定の規定があります。また、医療ガスの製造・販売には薬事法に基づく責任者の資格が求められます。薬事法は医療ガスの安全性と品質の確保を目的としているため、これらの規制や要件の遵守が重要になります。

【第3段落医療用ガス根拠サイト】https://www.jimga.or.jp/files/page/education/Medical_gases_info/chishiki_all.pdf