「飲む点滴」という表現は薬機法(旧薬事法)に引っかかる?抵触しないためのポイント

「飲む点滴」は、主に甘酒に使用される別称です。よく耳にするフレーズではありますが、表現が薬機法(旧薬事法)に触れる可能性はないのか気になっている方もいるかもしれません。そこでこの記事では、甘酒が「飲む点滴」と呼ばれる理由とともに、「飲む点滴」という表現に薬機法的な観点での問題はないのかについて解説します。

併せて、薬機法に抵触しないため意識したいポイントなども解説します。

⇒薬事法におけるガスの取り扱いはどうなっている?

「飲む点滴」とは

「飲む点滴」とは、点滴のように栄養が多い飲み物のことを表すフレーズです。点滴は本来、管状になっている針を皮膚から血管に刺し、輸液を体内に注入するもの。点滴をする目的はさまざまですが、経口で食事や水分を摂取できないときに、栄養を補給するため点滴が用いられることがあります。

つまり、本物の点滴は口から摂取することはありません。それでは具体的に「飲む点滴」と呼ばれるのは何か、それは甘酒です。甘酒は米を発酵させてつくる飲み物のこと。優しい甘みが特徴的な甘酒は、日本で古くから飲まれてきた発酵食品の1つです。

甘酒は米麹の麹菌を利用し作る方法と、酒粕の酵母菌を利用し作る方法の主に2種類がありますが、「飲む点滴」と呼ばれるものは基本的に前者の方。ちなみに米麹で作る甘酒はノンアルコールです。甘酒にはブドウ糖を始めとし、ミネラル・ビタミン・必須アミノ酸など豊富な栄養が含まれており、これが点滴の成分と似ているため、飲む点滴と呼ばれています。

なお、甘酒を飲むことで、さまざまな効果が期待できるとも言われています。例えば日々の栄養バランスを整えるために甘酒を利用するのも1つ。食事で栄養が十分とれないときに、甘酒を飲むことで栄養をプラスするという取り入れ方です。

また、美容面でも甘酒は良いはたらきをもたらすと言われています。具体的には美肌を目指す人などに人気です。活き活きとした肌づくりにはバランスのとれた栄養が不可欠であり、栄養満点の甘酒が役立つと考えられています。

「飲む点滴」という表現は薬機法(旧薬事法)に抵触する?

「飲む点滴」というフレーズを耳にしたとき、薬機法について知識がある人は少し疑問を感じるかもしれません。薬機法は正式名称を「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」と言います。2014年の法改正で名称が変更されるまでは、薬事法という名称が使われていたため、こちらの方になじみが強い人もいるでしょう。

薬機法の中では、医薬品等を製造・販売する際、広告等で古代表現がなされないような運用などが定められています。

そして、医薬品に該当しないものについて、医薬品のような表現で宣伝などを行うことも、この法律において禁じられています。甘酒は医薬品ではありません。それを「飲む点滴」と医薬品のように呼ぶことに、薬機法的な問題はないのか不安に思う人もいるのではないでしょうか。

結論を言えば、「飲む点滴」という表現が薬機法に抵触するか否かは、使い方によりケースバイケースです。

「飲む点滴」という表現のOKライン

「飲む点滴」という表現が薬事法の観点から見て問題だと判断されにくい、OKラインの表現は伝聞的な書き方だと考えられます。例えば「甘酒は『飲む点滴』とも言われています」などです。この文章は、甘酒を飲む点滴だと決定づけているわけではなく、あくまで一般的にこのような表され方をすることがある、という一般論として語っているに過ぎません。

したがって、文章を読んだ人に誤解を与える可能性が低いと考えられるため、薬事法にも抵触しにくいと判断できます。また、「『飲む点滴』とも言われる甘酒は~」など、甘酒を形容する言葉として使うのもセーフ。

ただし、この場合も断定的な表現は避け、効能を表すものではなく別名の1つであるという表し方を意識することが大切です。

「飲む点滴」という表現のNGライン

「飲む点滴」という表現が薬事法違反とされる可能性があるのは、商品のキャッチフレーズとして断定的にこの文言を使った場合です。「飲む点滴」というフレーズ自体はよく耳にするもので、一般的に使われる表現ではあります。

しかし、あたかも「この商品は『飲む点滴』である」と断定しているような表現は、見た人に「甘酒を飲めば点滴と同じ効果が得られる」と誤解させる恐れがあります。「飲む点滴」という文言が、甘酒のイメージを表す名前の1つであるという表現の範囲を超え、甘酒に医療品と同じ効能があると思われるような言葉を使うのはNGです。

例えば甘酒を商品として販売する際、パッケージに「これはまさに飲む点滴です!」などといったフレーズを記載するのは誇大広告と見なされ、法律に触れる可能性が高いと言えます。

薬機法(旧薬事法)違反となる表現をしないため気を付けたいポイント

薬機法違反と判断される表現を使用しないよう、文言には特に注意を払う必要があります。最も意識したいのは、効果や効能があるなど、効き目を断定するような表現を避けることです。医薬品ではないものに、薬事的な効果があるかどうかはわかりません。

「『飲む点滴』と呼ばれる甘酒」と伝聞的な表現にしても、「甘酒には点滴と同じような効果があります」と効果を断定するような文言を組み合わせてしまえば、これは薬事法に抵触する可能性が出てきます。効果について言及したい場合は、効果が「ある」と言い切るのではなく、効果が「期待できる」など、ぼかした言い回しをするのが1つのコツです。

また、「甘酒を飲むと肌荒れが治る」などの表現もよくありません。薬機法では「治る」「消える」など、治療に関して断定する表現もアウトです。甘酒は確かに豊富な栄養が入っているため、摂取することで健康や美容的なはたらきも期待はできます。

しかし、飲めば必ず疾患に利き目があると誤解を与えるような表現は避けなければいけません。例えば美容的な効果に言及したいなら、「肌荒れを防げる」「肌を健やかに保てる」などの表現にとどめる必要があります。薬機法については具体的にこの表現は法律違反だと、はっきり示されているわけではありません。

だからこそ、細かなところまで注意することが重要です。

「飲む点滴」という表現が薬機法(旧薬事法)に抵触するかは使い方次第

「飲む点滴」は多くの人が聞いたことがあるであろうフレーズですが、商品などで使用する場合は、薬機法を意識しながら表現や使い方に十分気を付けなければいけないでしょう。薬機法はありとあらゆる言葉の是非について示しているわけではないため、法律に抵触するか否か判断が難しい部分もあります。

今回の記事を参考に、法律として問題のない表現についてじっくり考えてみてください。